Interview: Tei Shi

Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+Pin on PinterestShare on TumblrEmail this to someoneBuffer this pagePrint this pageShare on VKShare on RedditFlattr the authorDigg thisShare on LinkedInShare on YummlyShare on StumbleUpon

今回紹介するのは、最新EP『Verde EP』で日本デビューを果たしたTei Shiの日本初となるロング・インタビュー。Tei Shiはアルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、現在はアメリカ・ニューヨークを拠点に活動する女性シンガー・ソングライターだ。『Verde EP』で聴くことができるリッチで柔らかなサウンド・プロダクションと、彼女の艶やかで甘美なヴォーカルが紡ぐシルクのようなポップネス……彼女はかつて自身の音楽を「mermaid music」と言い表した。
ライターの天井潤之介氏による今回のインタビューでTei Shiは、様々な都市を巡った幼少時代から、ミュージシャンとしての道を志した頃、そして最新作についてたっぷりと語っている。

 

Interview: Tei Shi

-今回のインタヴューは、おそらく日本で紹介される初めてのロング・インタヴューになります。なので、最新作の『Verde EP』の話と共に、あなたの過去やバックグラウンドに関する話についても聞かせていただければと思います。
あなたの出身はアルゼンチンのブエノスアイレスで、8歳まではコロンビアで育ち、その後はカナダに移住されたそうですね。環境が目まぐるしく変わる中で多感な年頃を過ごされたと思いますが、あなたの少女時代とはどのようなものだったのでしょうか? また、その経験は現在のあなた自身やあなたが作る音楽にどのような影響をもたらしていると言えますか?

Tei Shi: 少女時代はとても楽しいものでした。家族が多く、姉が3人いて、私にいろいろなことを教えてくれました。子どもの頃にとても多様性に富んだカルチャーを経験したせいか、自分の環境を変えたり、あちこちに足を運んだりすることが大好きになったんです。なので、好きな音楽もかなり幅広くて、クラシックなロックやフォークとか、両親が聴いていたジャズ、それに姉たちが聴いていた様々なポップ・ミュージックだけでなく、当時はラテン系やスパニッシュ系の音楽も身近なものでした。大まかに言えば、こうした環境のおかげで幅広い音楽の影響を受け、ジャンルやサウンドという点では国境を越えたものをつくりたいという気持ちが育まれていきました。

-その少女時代のあなたにとって、音楽はどんな存在でしたか? また、当時のあなたが最も夢中になったアーティストやレコードを教えてください。できれば理由も併せて。

Tei Shi: 子どもの頃、音楽はとても重要な存在でした。すごく強い絆を感じていたし、歌を歌うことは当時の濃密でエネルギッシュな感情を吐き出す手段でしたが、まだそれをどう整理して言葉で表現したらいいのかが分かっていません。歌うことですごく解放感や情熱を感じていました。それに姉たちの影響もあって、歌や楽器を演奏することが大好きになりました。幼い頃から日記に歌を綴っていたんですけど、その当時は自分が書いているものが歌だとは気づいていなかったです。どちらかというと、詩のようなもので、それにメロディが付いているという感じでした。そういうものが長い年月をかけて変化していき、現在の形になったんです。私が夢中になったアーティストは、Whitney HoustonやMariah Careyといった歌手や、The Beatles、Queen、Fleetwood Macなどのバンドでした。真実を語っているものや、音楽的な力強さがあるものなら、ジャンルを問わず何でも好きでした。こうした音楽が好きな理由はさまざまですが、共通して言えるのは、自分自身とつながる力や、内省的な側面があり、そういうところが大好きなんです。

-2年前に発表されたデビュー・EP『Saudade』に収録された曲の大半は、ボストンでの大学時代に作曲されたものだそうですね。いま聴き返してみても、その洗練されたソングライティングとあなたの魅力的な歌唱に引きつけられますが、そもそもあなたがミュージシャンを目指すことになったきっかけとはどのようなものだったのでしょうか? また、その当時あなたが思い描いていた自身のミュージシャン像、ロールモデルと言えるアーティスト、音楽的なヴィジョンとはどのようなものだったのでしょうか?

Tei Shi: ありがとうございます! 私はいつも真剣に音楽を追求したかったし、自力でミュージシャンになりたいと思っていました。本気で音楽の道で生きていこうと考えるようになったのは、音楽の勉強で大学に通っていた時でした。音楽の勉強をすると決めたことで、ものごとが前に進み始めたんです。大学時代は自分ひとりで歌をつくってレコーディングをしていて、人に披露することはありませんでした。今でも私にとって音楽はひどく個人的なものです。大学を卒業してニューヨークに引っ越し、まだぼんやりとした形だった歌やアイディアがあったので、それらをちゃんとレコーディングして発展させ、最終的に『Saudade』に収録された6つの曲ができあがりました。ミュージシャンになろうという決断は気負ったものではなく、少しずつそうなっていったという感じで、その過程では多くのサポートや助けがありました。ポップスターやアイドルになりたいと思ったことは一度もありません。ただ、自分らしくて面白いものをつくりたかったんです。そういうことをずっと追求し続けてきたので、ミュージシャンという枠を超えて他にもやりたいことがたくさんあると気づきました。何かの役に立ちたいと考えているし、音楽で得た成果を活用して発言ができるようになりたいです。これまで考えたこともなかったような音楽やアートの別の側面を探求して、自分のスキルを飛躍的にのばして、他のミュージシャンとつながれたらいいと思っています。ずっとひとりのミュージシャンだけを尊敬してきたわけではないですが、憧れのミュージシャンは大勢います。Freddie Mercuryや、Björk、Jack White、Feist、Stevie Nickなどです。偉大なミュージシャンからは素晴らしいことが学べます。

-ちなみに、3歳から14歳までバレエを習われていたそうですが、その経験は現在のあなたの音楽やパフォーマンスにどう生かされていますか?

Tei Shi: バレエのレッスンが私の人生に与えた影響や恩恵は、きっと無意識のレベルにあると思います! 14歳からはバレエはやっていないので、もうほとんど忘れてしまいました。ですが、バレエやダンス全般のおかげでパフォーマンスは確かに成長しました。バレエのおかげでパフォーマンスや「ステージ」に自然に入っていけたと思います。でも、そうしたパフォーマンスは自分の音楽を演奏するのとは大違いです! とはいえ一般的にバレエは規律や忍耐力、こつこつと上を目指す心を培うものだと思いますし、それはとても有意義なものです。それに、芸術や創造性における繊細さやバランス感覚を大切にするようになると思います。バレエでは非常に繊細で優雅な動きを通して、とてもインパクトのあるアグレッシブなことを表現できます。音楽についても同じことが言えるかもしれません。

-あらためて振り返ってみて、『Saudade』はあなた自身のどんな時期が記録された作品だと言えますか?

Tei Shi: 『Saudade』は、ボストンに住んで音楽学校に通った3年間の記録です。これらの曲は、当時、自分の部屋にひきこもってベッドの上でノートPCを使って書いたものです。今でも『Saudade』を聴くと当時の感情がよみがえってきます。あの頃はすごく孤独で寂しく、なんとなく居場所がないような気がしていました。結果的に内省的になり、それが歌にも出ています。

-対して、最新作の『Verde EP』はどのような音楽ヴィジョンを元に、具体的にどのようなソングライティングのプロセスをへて制作された作品なのでしょうか?

Tei Shi: 『Verde EP』の曲は、『Saudade』を発表してから現在までの間に書かれたものがいくつかあります。制作プロセスは緩やかなもので、歌を書いたりアイディアが湧いてきたりして、自然に数が増えたので選りすぐって仕上げました。だから、とても自然に少しずつ完成したんです。歌を書き、デモの形にレコーディングして、Luca Buccellatiのところに持っていきました。彼は私のほとんどの曲をプロデュースしています。こうしたデモや再レコーディングしたものをさらに発展させ、インストゥルメンテーションを加えたりしました。本当に楽しかったです。以前より時間もあったし、制作にこめた意図もあったという点では、前回と制作プロセスは異なっていました。『Saudade』は10日ほどでまとめたので。これは発表する意図も期待も全くありませんでした。それに、とても基本的なリソースだけを使って完成させたので、大半の楽曲はかなり素朴でミニマリスティックで、ほとんどアカペラのようでした。『Verde EP』では音楽を外にもち出し、人々がどう反応するかを見ることができました。部屋で孤独にノートPCを使っていた頃に比べて、もっとずっとダイナミックな視点がもてました。それで結果的に、よりダイナミックでいろいろな楽器を使い、多様性に富んだ曲を作りたくなりました。あと、以前よりもずっと幸福でポジティブな気分だったので、なんとなく歌も明るくアップビートになりました。

-『Verde EP』は『Saudade』と比べて、音楽的な奥行きやプロダクションの精度、何よりあなたのヴォーカリゼーションにおいて大きな進化や深化を感じさせます。あなた自身としては、具体的にどのようなポイントにおいて『Saudade』からの飛躍を感じますか? あるいは、『Verde EP』の制作において新たに持ち込まれたインスピレーションやアイデアとは何でしょうか?

Tei Shi: さっき言ったように、音楽を外に持ち出し、それを通して人と交流し、ライブ演奏をするといったことが全て合わさり、よりダイナミックなやり方で新しい音楽にアプローチしたいと思うようになりました。それとLucaとの仕事ですね。あの音楽を形作ったのは、私のアプローチやスキルや成長だけではなく、彼の力もあります。彼もあの時期に成長し、プロダクションの多くを学んでいたので、一緒に『Verde EP』の作業をする頃には全てがより進化していました。

-例えば「Bassically」や「Go Slow」においては、これまでのあなたの楽曲以上にポップであることに対する意識を強く窺わせます。そうした変化はあなた自身も意識していたところですか?

Tei Shi: これらの曲をよりポップにしようと思ったことは全くありません。ポップ・ミュージックは確かに大好きですが、ふだんよく聴く音楽のジャンルではありません。「Bassically」は『Drive』のサウンド・トラックで耳にするような、ダークなディスコソング的なイメージでつくりました。「Go Slow」は私にとってファンク・テイストのキャンディ・ソングをつくるという試みでした。キャッチーなメロディが大好きで、それはしばしば「ポップ」なものとして受けとめられます。私はレッテルを貼ることはしませんが、もし「ポップ=キャッチーなもの」というなら、そうですね、確かにこれらの歌にはポップなアプローチがありました。

-一方、「See Me」におけるミニマルな音作りやサンプリングも散りばめた実験的なビート、あるいは「Can’t Be Sure」の美しい音のレイヤーやハーモニーも耳を捉えて離しません。そのあたりのプロダクションやトラック・メイキングに際して今回意識していたこととはどんなことでしょうか?

Tei Shi: ありがとうございます! 「Can’t Be Sure」は『Saudade』の曲を書いていたときとかなり近いやり方でつくりました。確か『Saudade』をリリースする前、このEPの作業をしていた頃だと思います。でも当時、この曲は使いませんでした。この手の歌は私にとって腰を据えてつくるというよりも、意識の流れを書きとめるという感じでした。レコーディングをしながら書き、ボーカルやハーモニーを足していったんです。「See Me」も同様で、ループペダルを使ってつくりました。インストゥルメンタルやサウンドスケープ、プロダクションに関しては、Lucaとのコラボでした。彼は楽曲にニュアンスをつけてくれました。特に「See Me」は素朴な感じに仕上げたもので、ただ音で遊んでいただけです。多くの曲にあるパーカッションは、私がベッドルームの床を踏み鳴らしたり、手で机を叩いたり、ドアを開けたり閉じたりしたものです。私はレコーディングするほどうまくドラムや他の楽器を演奏できないので。それで代わりにこうしたものを使い、「See Me」のような音楽が誕生することもありました。でも大半はLucaとの共同作業です。

-また、歌詞を書く際に心がけていることを教えてください。愛や孤独をめぐる感情の揺れ動きや考察がテーマになっているような印象を受けますが。

Tei Shi: 歌詞は、意識的に自分の感情を表現することもありますが、だいたいは自然に湧きあがるランダムな意識の流れという感じで、それにメロディをつけています。歌詞が歌の中心になることもあれば、脇役のこともあります。これは歌によって変わります。でも、歌詞を書くときはあまり多くのことを考えないようしていて、たいていは自分の口から最初に出てきた言葉を大切にしています。

-『Verde』というタイトルにはどんな意味が込められてるのでしょうか?

Tei Shi: 「Verde」はスペイン語で緑色を意味します。この色は、私がこのEPの楽曲をつくっていた頃に感じていたもので、私の気持ちがどんなふうに成長し、「芽吹き」、いつもやりたかったことに到達したかを象徴しています。

-ちなみに、昨年公開されたBeyoncéの「No Angel」のカヴァーも大きな話題を集めました。あの曲をカヴァーに選んだ理由は? また、自身に影響を与えた、リスペクトの対象という意味で機会があればカヴァーしてみたいアーティストがいれば教えてください。

Tei Shi: あの歌は、Beyoncéのニュー・アルバムを聴いていた時、自分の中にぱっと飛び込んできたんです。ChairliftのCaroline Polachekが書いてプロデュースしたもので、私は彼女の大ファンでもあります。別々の理由で尊敬するふたりのアーティストがコラボしたようで、単にあの歌が大好きで、自分流にやってみたかっただけです。自分のバンドと一緒にライブでカヴァーしたのが始まりで、観客の反応があったように思えたので、レコーディングすることにしたんです。いつかフレディ・マーキュリーのカバーもやりたいです。

-現在活動の拠点を置かれているブルックリンの音楽シーンは、あなたにとってどんな環境でしょうか? また、ブルックリンに限らず、あなたが最近注目している音楽シーンやアーティスト、最近聴いて印象に残ったレコードがあれば教えてください。

Tei Shi: ブルックリンにはクールなところがあります。でも、だんだん変わってきて、多様性が減ってきたように思います。多くのアーティストがニューヨークから西海岸に移動していて、ブルックリンでさえ家賃が高くなっています。以前よりも活気あるシーンが減ったような気がします。とは言うものの、クールな音楽をつくっている友人が周りには大勢いるし、すごく面白いことをやっている人々のコミュニティも間違いなく存在しています。最近のレコードではBraidsとUnknown Mortal Orchestraのニュー・アルバムがお気に入りです。

-例えば、FKA twigsやBanks、Lordeなど同世代女性アーティストは意識する対象ですか?

Tei Shi: 自分の周りにいる同世代のミュージシャンは全員意識しています。男女問わずです。みんなカッコいい音楽をつくっていて、本当に尊敬しています。

-現在、年内にもリリースが噂されているファースト・アルバムを制作中だと思いますが、どんな作品になりそうですか? 言える範囲で教えてください。

Tei Shi: アルバムはまだアイディアの段階で、具体的な形にはなっていません。なので、お話するのは難しいです。どんなものになるのか全くわからないです。時間が教えてくれるでしょう。

-『Saudade』のリリース時、あなたは自身の音楽について「mermaid music」と形容されましたが、今回の『Verde EP』についてもまた何かあなた自身がコピーを付けるとすれば、どう形容しますか? その意味と共に教えてください。

Tei Shi: 『Verde EP』は「mermaid music」の延長ではないかと思います。この言葉はふと思いついたもので、音楽をどう説明したらいいかはわかっていませんでしたし、それを分類するようなこともしたくありませんでした。「mermaid music」というのはただ自分らしい気がした表現で、わたしが何をしていようが、どう変化しようが、この言葉も私と一緒に変化していくものだと思います。

 

Interview by Amai Junnosuke (天井潤之介)
Text by Kanou Kaoru (加納薫)


 
Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+Pin on PinterestShare on TumblrEmail this to someoneBuffer this pagePrint this pageShare on VKShare on RedditFlattr the authorDigg thisShare on LinkedInShare on YummlyShare on StumbleUpon