Interview: Darkstar

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今回紹介するのは、先月末にニュー・アルバム『Foam Island』をリリースし、今月11日(日)には、渋谷WWWにて2年ぶりの来日公演開催を控えるロンドンのエレクトロニック・デュオDarkstarのオフィシャル・インタビュー。
彼らにとって、約2年ぶりのオリジナル・アルバムとなる本作は、メンバーのAiden WhalleyとJames Youngの2人が、故郷にほど近いハダースフィールドでおこなったドキュメント・プロジェクトを通じて出会った人々や感情が大きく影響を与えた作品。イギリスの現在の情勢が反映された作品と言われると、一見とっつき辛く感じるかもしれないが、このインタビューでメンバーのJames Youngは、本作が提示するものは過度な政治的主張ではなく、自分たちが観察し取材した現在のイギリスという国、そこに暮らす人々のドキュメンタリーであることを明確にし、制作過程などについて事細かく語っている。

 

 
Interview: Darkstar (James Young)

-新作『Foam Island』レコーディングの前、昨年ヴォーカルのJames Butteryが脱退し、Darkstarは再びコアの2名(=Aiden Whalley&James Young)編成に戻りましたね。Aidenがヴォーカルに戻るというのは、どんな風に決まったんですか。

James Young – うーん、まあ、あれは純粋に音楽的な決定だったし、実はしばらく僕達の中で起きていた変化の結果だったんじゃないかな。ここ最近の活動を考えても、James Butteryが僕達と一緒にスタジオに入ることは実はあまりなかったわけで、とにかく……「これ(James Butteryの脱退)はもう避けようがない」って感覚があったというか。だから僕達はなんというか、グループにとって非生産的でネガな雰囲気が生まれることになる前に、先手を打って決断を下さなくちゃいけなかったという。

-そうやって原点のラインナップに戻ってみて、今どう思いますか。

James Young – 僕はエキサイトしてる。っていうか、僕達ふたりとも、この展開に本当に盛り上がっているんだ。なんというか……僕達はかなりの数のマテリアルを作っているところだし、もともとこのふたりで始まったわけだしね。だから、この変化についてはあまり深く考えていないっていうか。というのもあれだって僕達にしてみれば音楽作りのプロセスのひとつだったわけだし、他の誰かが関与しようが、もうひとりスタジオにいようがある意味関係ないんだよ。要は、僕達ふたりがうまくやれているかどうか?なわけで。

-インダストリアルで一種閉所恐怖症的なファースト『North』、サイケデリックな色彩に富んだセカンド『News From Nowhere』、そして新作のミニマルな瞑想調と、Darkstarはアルバムごとに大きくムードや音空間を変えています。一種つかみ所のない、とも言えるこの変化への欲求はどこから来ているのでしょうか。それがあなた達の活動の推進力になってもいる?

James Young – そうだなあ、自分達で特に意識することはないんだけど、うん、こうして考えてみると(笑)、今やアルバムごとに変わるってのが一種のパターンと化しつつあるのは確かだ。それがDarkstarの特徴になってきてるっていう……実際、僕達はアルバムごとにかなりドラマチックなシフト・チェンジを経ているよね。でまあ、思うに僕達にとってはそれがノーマルっていうのかな、好奇心から変化が生まれているんだと思うし、僕達が常に話してきたのは、『聴き手のことを考え始める前に、まずスタジオの中にいる段階で自分達自身が満足できなくちゃダメだろう』みたいなことで。だから、自分達自身がエンジョイできている限り僕達は変容し続けていくだろうし、そうやってアーティストとして成熟していくんだろう、と。だけど今となっては、そういった点すら考えなくなってきているけどね。とにかくその時点で、自分達が作りたいと思ったレコードを作るのみ、という。

-『North』はあなた達が今住んでいる北ロンドンとあなた達の出身地である英北部、『News From Nowhere』はレコーディングの行われたヨークシャーのフィールドといった具合に、環境/ランドスケープはDarkstarのインスピレーションに大きく作用しているようです。新作『Foam Island』は、どんな景色に影響された作品なのでしょうか?

James Young – 今回の僕達は、ロンドンとヨークシャーのカントリー・サイドを行き来していたね。かなり何度も往復したし……レコードの中で聞こえる色んな声、様々な人々の発言は、基本的に僕が3ヶ月にわたってハダースフィールド(※西ヨークシャーの都市)の地元住民を相手に行った、一連のインタヴューから生まれたものなんだ。その取材を通じて彼らの持つ視点や人生観を知ることができたし、そこからこのレコードの屋台骨、背骨みたいなものができていった。だから僕達は、ある意味彼らとのインタヴューをこの作品のコンセプチュアルなガイドラインとして使ったんだね。

-そのインタヴュー・プロジェクトのそもそものきっかけ、目的は何だったのでしょうか。なぜ英北部の若者達の肉声を拾いたかったのですか? 「コンセプト面での芯になっていった」とのことですが、元々このアルバムで使うことを前提に企画されたプロジェクトだったということ?

James Young – うん、実はそうだったんだ。『News From Nowhere』を作った後で、僕はYouTubeを見ていてとあるドキュメンタリー作品に出くわしてね。あの作品が今回のコンセプトのはずみになったし、僕達は……実際に生きている人々の人生の断片を挿入することでレコードを分断していくっていう、そのアイデアが気に入ってしまってね。そう、とにかくほんと、そこからだったんだ。で、そのまま続けていったという。そういう風にして、とある時のとある場所の記録を作ろうとしたっていう。

-その意味でも、この作品を2015年にリリースするのはあなた達にとって非常に重要なのだと思います。広い意味で、今年の5月に行われた英総選挙とその結果に対するあなた達の反応が感じられる内容ですし。

James Young – うん、その通り。その通りだよ。今言われたような内容の作品だし、だからこそ今、2015年に発表するのが大事な作品なんだ。とても強く今年と繫がっているアルバムだし、僕達は……だからこそ今、この作品を提示しなくちゃいけないっていう。特に今みたいに、総選挙の時期が終わって落ち着いてしまったタイミングではね。これは政治的な意味合いがこめられたレコードだし、僕達は人々に……他の人間達の持つ視点、首都ロンドンを生活基盤にしていないような、イギリスの他のローカルなエリアで暮らす人達の声に耳を傾けてほしいんだよ。僕達は大きな国で生きているんだし、そこにはありとあらゆる類いの人々が暮らしている。けれどそうした色んな人々の様々な生活の側面に、必ずしも触れることがないまま生きてるって人達もいるんだよ。だから僕達が考えたのは、自分達には〈Warp Records〉を通じて作品を出すというプラットフォームがあるわけだし、だったらそれを通じて彼らの声の一部を見せていこうじゃないか、と。

-そのあなたが行ったインタヴューですが、彼らに対する質問はどういったものだったんですか? 

James Young – そうだな、具体的なものではなく、かなり抽象的な質問を投げかけようとしたよ。だから、僕達が訊いたのは…「あなたの夢は何ですか?」といった質問だったね。彼らはどんなことを夢見ているのか、人生に何を求めているのか……それとか、たとえば「くつろいでリラックスしたい時にあなたはどんなことをしますか?」とか……あるいは子供を作ることになると思ったか?とか、誰か好きな人はいますか?みたいな。とにかくそういう広義な質問だったけど、でも全体として言えたのは、いったんこうした類いの質問を投げかけて会話を続けてみると、なんというか……ある意味、答えているその人間のソウルを探究できるっていうかな。で、そうした魂の深いところには、宝石の粒とでもいうか、知恵に満ちた宝珠が待っているっていう。だから、その人がどんな風に人間としてできているのか、それが次第に理解できてくるんだよ。でまあ、そこに達するまでにかなり時間がかかったとはいえ、あのプロジェクトのおしまいの方までには僕達の取材テクニックにも磨きがかかったし、それでレコードにきちんと影響を与えるような、そういう反応を人々から引き出せるようになったという。

-取材を行った際に、人々のコメントに驚かされたことなんてありましたか? それとも、大体あなた達が思い描いていたような、英北部に暮らす若い人々のリアクションだったでしょうか?

James Young – 驚かされたこともあったね。だけど、僕自身が取材を行ったハダースフィールドからさほど離れていないエリアで育った人間だし、だからあの街で今どういうことが起きているのか、その状況はちゃんと認識できていて……でも、うん、あのインタヴューをやってみて非常に解放されたし、ものすごく魅惑される経験だったね。ああした取材を実践できるっていう、そんな立場に自分がいるってこと自体がありがたかったし……うん、ああやって、若いキッズの放つあれだけのエネルギーに触れられたってことだけでも……とにかく魅力的な経験だったよ。

-なるほど。このアルバムを聴く前に「政治的な思いがこもった内容だ」と聞いて、実は「ということは、現在のイギリスに対する怒りやフラストレーションに満ちた、アグレッシヴな内容になるのかな?」と少し心配だったんです。

James Young – うん。

-ところが実際に作品を聴いてみたら、そういうアジテーションや批判のトーンはなくて、むしろストイックだと思いました。特にアルバムの最後の方、「Tilly’s Theme」や「Javan’s Call」のあたりでは一種の希望すら感じたのですが、そこはあなた達の狙いでもあったでしょうか?

James Young – そうだね。自分達に与えられた選択肢にうんざりしているような、そういう人々の姿をとにかく漫然と描くってことは絶対にやりたくなかった。僕達がインタヴューさせてもらった人達は、確かに社会的に限られたオプションしか持っていないような人達だった。ただ、それでも彼らは素晴らしい人生を送っているんだよね。素晴らしい共同体に生きていて、素晴らしい友人達に恵まれている。で、彼らはいまだに西ヨークシャーを自分達の故郷にしようとしていてね。彼らは自分達の生まれ、育った街に誇りを抱いているんだよ。確実にオプティミズムが感じられたし、僕達としてもアルバムを通じて幅広い感情が聞こえてくる、そうした内容にしたかった。だから、僕達はただ単純に「はい、これが2015年のイングランドの現状です。保守党が総選挙で勝利し、再び政権をとった今のイギリスはクズです」なんて言いたくなかったし、それに……そんな状況にあっても、取材させてもらった人々の日常の中には美しい瞬間が備わっているんだしね。そこを探ってみたかったんだよ。

-ミックスおよび共同プロデューサーのLEXXXは第三者の視点を与える役割だったでしょうか?

James Young – そうだね。外部の人間のパースペクティヴは大事だし、それに彼は良い耳の持ち主でね。だから彼の意見は信頼しているし、実際の話、僕達と一緒に同じ空間で作業していて、意見を発したり提案できる人ってそんなに多くないからね。もちろん意見に耳を傾けはするけど、彼は……非常に才能にあふれた、そういう人々のひとりだし、素晴らしいエンジニアでもあって。彼は能力に長けた人だし、だから彼の側でも僕達と仕事するのを気に入ってくれているのは、ラッキーなことだと思っているよ。

-個人的な意見ですが、クラシック/現代クラシック音楽とエレクトロニック・ミュージックの融合という意味で、『Foam Island』を聴いていてArthur Russellを思い起こしました。実際に、本作品に影響を与えた作品や、最近好んで聴く作品がありましたら教えてください。

James Young – そうだなあ……うーむ!(考え込む)……僕達がアルバムを作っていた頃に聴いていた作品と言えば……Kendrick Lamarかな。

-(笑)へえ。

James Young – 彼の作品はよく聴いたし、それから僕達はGwylim Goldっていうアーティストと仕事していて、だから彼の音楽はかなり聴いたね(※Gwylim GoldはDarkstarのミックステープ『Kirklees Arcadia』で共演)。それからAphexのレコードも相当聴いたし、それに色んな現代音楽/モダンなクラシック音楽の作曲家達の作品も聴いていた。だから、今指摘されたArthur Russellは当たっているね、彼の作品は実際よく聴いている。他には何があるかなあ……? んー……Moodymannとか。フーム……(まだ考えている)まあ、大体そんな感じだよ。

-今聴いている作品で、ハマっているものは何かありますか?

James Young – ええ〜〜と……Vince Staplesの新作は好きだね。それから……Jamie Woon。彼が新作のレコーディングをしていた時にスタジオが同じだったんだよね。まだ発売前だけど、彼の新作はすごく良いよ!

-この作品を聴いて、あなた達のことをダブステップの文脈で語る人はあまりいないだろうと思います。

James Young – ああ。

-ですが、もともとあなた達はロンドンのダブステップのクラブ・シーンに影響されて音楽をプロデュースし始めたわけですよね? 今のあなた達の、ダブステップに対する思いを教えてください。

James Young – 実を言うと、僕はよく知らないんだよな。もちろん、そう言ったって、別にダブステップをケナすつもりは毛頭ないんだよ! ただ、とにかく……本当に僕はあんまりよく知らないんだよ。自分にとってはよく聴く音楽でもないし、僕達はダブステップのパーティに繰り出すわけでもないし、そもそもロンドンで今でもダブステップのパーティが行われているかすら知らないし。うん、ものすごく率直に言わせてもらえば、今の僕達にとってそんなに関心を寄せる対象ではない、そういうことだね。

-これまでの作品ではヴォーカル/声への興味が強く、コンピューター風に加工したり強いエフェクトをかけたり、テクスチャリングされたヴォーカルを使うことが多かったと思います。ところがコントロールされた声ではなく、今回は女性・男性・ローカルなアクセントと、雑多な肉声が音楽と同居しています。そのぶんDarkstarの他の作品と較べて異なる印象を受けましたが、この点は作品作りにどう作用したと思いますか?

James Young – まあ、いくつかの段階を踏んで作っていったんだよね。肉声を使うことの難しさを感じた、そこで苦労した場面も確かにあったけれど、それと同時にヴォーカル素材をスピーディにモノにできた瞬間もあったという……だけど正直なところを話すと、アルバムの曲はすべて、去年のほぼ今頃に作り終えていたんじゃないかな。

-そうなんですか!?

James Young – うん。だから曲そのものはすべてずいぶん前に書き上げてあった、アルバムとしてまとめ始めるずっと前から存在していたっていう。というわけで、僕達はかなり長いことこれらの楽曲を待機させていたんだ。それだけに、僕としてはこのレコードを作っていた当時に遡って、その様子を君に話すのは決して楽じゃないんだよね。ほんと、「ずいぶん前の話」って感覚だからさ。

-なるほど。でも面白いですね。というのも、さっきも話したように、これは総選挙の結果が出た今年にこそ出るべきアルバム、「2015年に出るべき内容」であって、ジャストなタイミングなわけです。

James Young – うん。

-でもあなた達はこの作品のベーシックな部分を去年から作っていたわけで、ある意味、あなた達には今年がどういう年になるのか、選挙の結果が大体予測できていたのかな?なんて思ってしまいますが(笑)

James Young – ああ……(苦笑)まあ、総選挙は5年ごとに行われるわけだし、それは変わらないわけだしね。だけど、正直なところ……さっき君が話していたように、このレコードを実際に聴く前に作品の概要の前情報を知ってしまうと、インフォ欄には「政治的な意味合いを込めた作品云々」なんて書かれているわけだよね。だけど、そうは言ってもこの作品は非常に繊細にそうしたテーマを扱った内容だし、僕達は何も……人々に説教を垂れようだとか、あるいは是非を問おうとしているわけじゃないっていう。僕達はただ、2015年という年の観察を述べているに過ぎないんだよ。それに、僕達は別に誰のことも可哀想だとか悲しいって風に思っちゃいないしね。僕達はただ、「ほら、こんな具合だよ」って風に現状を提示してみせているだけだし……そうやって「こういうこと。今(イギリスで)起きているのはこういうことなんだ」と証明してみせたっていう。で、そうやって見せられた状況に対して聴き手が居心地悪く感じようが、あるいはエンジョイしてくれようが、それぞれのリアクションを決めるのは僕達の役目じゃないからね。ただ、少なくともこの観察は僕達のレコードに収められているわけだし、だから試しに聴いてもらいたい、と。

-なるほど。

James Young – だから、この作品は「労働党に投票すべき」とか「保守党なんて蹴散らせ」みたいな感じの、そういう意味で過度に政治的なレコードじゃないんだよ。

-(笑)ええ。そうは言っても、地元自治体の予算縮小アナウンスが流れる「Cuts」や、特に最後の曲、「Days Burn Blue」(※青はTories=英保守党の公式カラー。5月7日に行われた選挙では保守党が圧勝し、今後5年の英与党の座に就いた)のタイトルからは、あなた達の失望が感じられましたが?

James Young – うん、確かにあの曲は、今年の選挙結果をもっともダイレクトに反映した曲だ。

-様々な声や街頭の雑音、公共アナウンス等が混じっているせいで、この作品を聴いていると時にポエティックなドキュメンタリー映画、あるいはChris Markerのフィルム・エッセイ(『La Jette』、『San Soleil』他)なども浮かびました。「耳で聴く映画」というコンセプトは、どこかしら制作中にもありましたか?

James Young – それは確かにあったね。僕達は……まあ、僕達の音楽の多くはもともと映画的なものだし、うん、その意味でもそうだね。

-特に今回は、ジャケット写真、ミュージック・ビデオ、あるいはライヴの際の映像といったヴィジュアル面で色々やれるのではないか?と思いますが。

James Young – アルバムのアート・ワークはまだ見てないの?

-あれはもうチェックしていますが、それ以外のヴィジュアル素材ということで?

James Young – あー、僕にもまだちゃんと分かっていないんだ。そこらへんは今まさに取り組んでいるところなんだ。

-たとえばライヴをやる際に、インタヴューした人々の映像を音にシンクロさせてバックに流すとか?

James Young – ああ、それはやるかもしれない。そこは今話し合いをしているところなんだけど、結局のところは……自分達にどこまでそうした要素を含めるだけの余裕があるか?なわけで。だから、今はまだ様子見ってところなんだ、ほんと。

-分かりました。ちなみに、アルバム発売前のティーザー曲「Pin Secure」のビデオでは、冒頭や途中でアルバム音源とは異なる男性のコメントが混じりますよね。これはAdam Curtis(※ラディカルなイギリス人ドキュメンタリー映画作家。作品中に自らナレーションの埋め込むスタイルで知られる)の声に似ているなと思ったんですが?

James Young – ……(苦笑)あれはDavid Cameron(※現英首相/保守党のリーダー)の声だよ!

-マジですか? ひゃー、これはお恥ずかしい……

James Young – ハッハッハッハッハッハッ!

-(笑)大変失礼しました。

James Young – (笑)いや、気にしないでいいよ。ある意味、Adam Curtisの声にちょっと似ているから。

-あなた達がいるシーン、大雑把に言えばエレクトロニカ〜アヴァンギャルド音楽の世界では、政治的なメッセージを発するとか、表立って/あからさまに現状に疑問を呈するといったスタンスは稀だと思います。さっきおっしゃっていたKendrick Lamarのように、アメリカではヒップホップがそうした役割を担っています。が、イギリスのダンス/エレクトロニック・ミュージック界では――私が知らないだけかもしれませんが――『Foam Island』のような作品は珍しいなと。この作品で、そうした一般概念を打ち破りたいという想いはありましたか?

James Young – あーん……そうだなあ、まあ、僕達の狙いがそこにあったわけではないんだけどね。ってのも、他の連中がどんなことを好んでやってるかとか、彼らが何をクリエイトしているかとか、僕達はそこに口を挟む権利はないんだしね。ただ、そうは言っても……君が今言ったことは正しいと思うな。だから、政治的な傾向を持つエレクトロニック・ミュージックが欠けているんじゃないか?という点だよね。いや、もしかしたらそういう音楽も存在していて、僕が知らないだけなのかもしれない。だけど、僕個人の観点から見ても、そういった音楽はシーンに欠けているように思える。だけど、そういった事柄が僕達に影響を与えたということは一切ないよ。僕達がこれをやりたかったのは、とにかく……自分達には言いたいことがあると感じていたからだし、『News From Nowhere』にしても、作品を作るのにあのエリアで1年半を過ごしたわけで、あの地域の地勢や景観は僕達もかなりよく理解することになった。だからその自分達なりの理解や観察を記録したいと思ったわけで、うん、ほんとにそういうこと、それくらい単純なことなんだ。

-『Foam Island』とは島国イギリスのことですか? 

James Young – そう。

-私はこの言葉からとても儚いイメージを抱きますが、このタイトルがどんな風に浮かんだのか、教えてもらえますか。

James Young – あれは……僕達が孤立した空間、社会の様々な場所にちらばっている空間に眼を向けたことから生まれたアイデアで。だから、人々あるいは色んなコミュニティが、いかに自分達以外の人間や他のコミュニティのことを一切知らないままで生存していくことができるのか……そしてどれだけコミュニティ群が互いに孤立した状況になることもあり得るのか、そうした事柄を考えていたんだ。で、僕達はそうした意味合いを包括するような何か、定義するような言葉を探していて、そこで「Foam(泡)」という言葉と、泡がどんな風に生まれるかに思い当たった。というのも、泡っていうのは基本的に無数の空気のポケットでできているわけだよね? で、僕達はこの作品で人々がどんな風に自分達なりの生活を営んでいるか、自分達自身の人生に取り組んでいるのか、そういったことを考えていたし、だから……とにかく、うん、このタイトルは基本的に、「この国は何千・何万もの泡から成り立っている」ということ、それを表現したものなんだよ。

-いくつもの、小さなバブルが集まったものだ、と。

James Young – そういうこと。で、そのバブルの中にはいくつもの共同体が存在している、と。

-面白いのは、「インターネットで世界とコネクトできる」と言われている割に、今、逆に人々は孤立しているんじゃないでしょうか。

James Young – ああ、そうなんじゃないかな。だから、人々はネットの楽さに頼り過ぎてしまうこともあるんじゃないか?と。で、人間ではなくネットだけを相手に過ごす、なんてこともあるっていう。僕自身、ツアーに出ている時とか、あるいは外出できないような時にはネットをブラウズしちゃうよ。それでも僕はしょっちゅう、それがフィジカルなものであれ、あるいは誰かがそこにいるってだけでもいいんだけど、他の人間とのコンタクトを強く求めるタイプなんだよね。うん、その要素は、ある意味このアルバムにも含まれていると思う。人々との繫がりを求めるっていう強い思いだね。

-分かりました。野党である英労働党の新たな党首候補として、Jeremy Corbynが現在大きな注目を集めています。彼は希望のない世代に希望を与える存在と言われていて、いわば『Foam Island』で聞こえる様々な声に耳を傾けようとする政治家とも言えますが、彼に対してはどんな意見をお持ちですか。

James Young – 彼はエキサイティングだと思う。彼がどんな人間なのか、そこまでちゃんと知らないとしても、人々は彼の意味する「変化」を期待している。だからなんだと思うよ、彼の支持者が増えているのは。そうは言っても、僕は彼のことを実際に調べてみたし、彼のこれまでのキャリア他には感心させられたけどね。それに、彼の政策を読んでいて興味深いのは……彼の考えるように左寄りの政策に向かったら、この国はいったいどんな風になるんだろう?、そう考えるとエキサイトさせられるんだよ。この国に再び社会主義の要素がもたらされるのかもしれない、コミュニティ意識がまた強まるのかもしれない、そんなフィーリングがあるし、僕としてはそれがしかるべき状態だと思うしね。たとえば欧州共同体の国々を眺めてみても、また左向きに向かい始めているんだよ。

-話は変わりますが:前作をリリースするにあたって、Steve Beckett (〈Warp Records〉のオーナー) はあなたたちの事を「The Beach Boys、Brian Eno、Radioheadが交差する場所にDarkstarは存在する)」と形容しています。実際に彼らの音楽からの影響はありますか?

James Young – うーん……Radioheadは本当に、本当にグレイトなバンドだけれども、自分達が影響を受けたか?と言えば、正直それはないと思う。僕達のサウンドは彼らとは違うものだし……でも、素晴らしいバンドだけどね! それに、ずいぶん昔の話だけど、自分達で2、3曲彼らの曲をカヴァーしたことだってあったし。Enoについては、間違いなく影響されたね。それはとにかく、僕達は自分達の音楽の中でサウンド・スケープやアンビエントの要素を使っているからだし、ということは、やはり潜在意識の中で彼から影響を受けているんだろう、ということだけど。そうは言いつつも、自分達のやっていることを聴いてみて、そこでEno作品からの直接的な影響をいちいち指摘することは僕にはできないけどね。だから確実に、潜在意識で影響されているってレベルの話なんだと思う。The Beach Boysについては……そう言われたのも理解できるけどね、ってのも前作での僕達はハーモニーにどっぷり入れ込んでいたから。だからそのコメントはなるほどと思うけど、一方で今回の作品で彼(Steve Beckett)がThe Beach Boys的な要素を掴むことはないだろう、比較することもないだろうと思うな。The Beach Boysっぽいところはほとんどない作品だし。(苦笑)

-(笑)アーティストとしてもリスナーとしてでも構いません。それぞれ各アーティストの作品でお気に入りの一枚と、簡単にその理由を教えて下さい。

James Young – うーん……Radioheadの作品だと、たぶん……『In Rainbows』になるだろうな。あの作品を作った時、おそらく彼らはバンドとしてもっともパワフルな状態にあったと思うし、それに……作曲能力という意味でも、あの作品で彼らはピークを刻んだんじゃないかな。音作りの面でも本当に素晴らしい、あれは見事な作品だね。うん……っていうか、あのアルバムは実は、僕にとっての生涯ベスト・アルバムの1枚でもあるんだよ。

-Brian Enoはどうですか。

James Young – Enoについては、正直よく知らないんだ。あんまり多く聴いていないし、「この1枚」って風に選べないというか、自分が彼の作品群を詳しく知っているとも思えないしね。ただ、僕にとってのBrian Enoというか、僕がもっとも好きな時期のBrian Enoと言えば、彼がClusterとコラボレーションをしていた頃だね。あの時期の彼がやっていたアンビエントな作品の多くとか、あの頃あたりのEnoの音楽はエンジョイしているし、うん、だから「Enoのこのアルバム」というよりも、あの時代のEnoって回答になるね。

-分かりました。The Beach Boysは?

James Young – すごく見え見えなチョイスだけど、『Pet Sounds』

-あの作品の実験性、ハーモニー・コーラスの美しさゆえですか?

James Young – そうだね。あの作品において彼らが人間のヴォーカルを使ってやっていたことというのは、ある意味風変わりな、だけど非常に斬新なものだったし、アレンジ面やヴォーカルでの実験ぶりも革新的で……まあ、これってごく当たり前な回答なんだろうなあ。

-(笑)気にしなくて大丈夫ですよ。ともあれ今日はありがとうございました。新作、そしてツアーの成功を祈っています。

James Young – こちらこそ、ありがとう。

 
Interview by Mariko Sakamoto
Text by Kaoru Kanou

Darkstar来日公演

2015/10/11(日)
渋谷WWW
前売¥4,000(スタンディング・税込・1 ドリンク別)
OPEN/START 24:00~
※20 歳未満の方の入場不可。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。
TEL: 03-3444-6751(SMASH)
*追加の出演者に関しては随時発表予定。

TICKET 9/19(土)10:00~ 下記にて一般発売開始
e プラス(プレ: 9/15 10:00 ~ 9/16 23:59)、ぴあ(P: 276-370)、ローソン(L: 75750)、岩盤、iFLYER

協力:BEATINK www.beatink.com
総合問合せ:SMASH 03-3444-6751
http://smash-jpn.com
http://smash-mobile.com


 
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